2024年、小島農園ではハスモンヨトウノ被害が大きくて驚きすぎて、頭が真っ白になるくらいでした。
例年通り、夏に緑肥を育て、8月に粉砕し、耕耘して、種を播いたのですが、
播いた種がほとんどハスモンヨトウに食べられて消えてしまいました。
ブロッコリーやケール、山東菜などの苗もほぼ食べられてしまいました。
2013年に農業を始めて、ハスモンヨトウによる壊滅的な被害ははじめてです。
調べたことをまとめてみました。
2024年は全国的にハスモンヨトウノ被害が多かった
2024年は全国的にハスモンヨトウノ被害が多かったようです。
三重県病害虫防除所
岐阜県病害虫防除所
岡山県病害虫防除所
和歌山県農作物病害虫防除所
大分県農林水産研究指導センター農業研究部
などなど、たくさんの県で「病害虫発生予察注意報」が出ていました。埼玉県のは見つからず。
猛暑の影響と書いてあったのですが、2023年も猛暑日が多かったです。2023年に増えたハスモンヨトウが、暖冬で越冬して、2024年にさらに増えたのではと思いました。
ハスモンヨトウの越冬
ハスモンヨトウは寒さに弱く越冬しないという記事を目にしたので、ハスモンヨトウの越冬について調べたところ次の論文がありました。
日本応用動物昆虫学会誌
ハスモンヨトウの耐寒性と越冬に関する研究
V. 南房総における越冬の可能性
松浦 博一, 内藤 篤, 菊地 淳志, 植松 清次
1992 年 36 巻 1 号 p. 37-43
抄録
千葉県館山市とその近郊の安房郡和田町において,12月中旬に野外と無加温ガラス温室にハスモンヨトウの幼虫と蛹を放飼し,越冬の可能性について検討した。
1) 暖冬の1986∼1987年と1987∼1988年の冬に行った試験では,館山市,和田町ともに放飼した幼虫の一部が3月下旬に生存しているのが確認された。生存率は若齢が中∼老齢に比べて高かった。しかし,平年に比べて寒冷であった1985∼1986年の冬に行った館山市の試験では,幼虫は3月下旬まで生存できなかった。
2) 和田町での幼虫生存率は,館山市のそれに比べて高かった。和田町は北西面が山で囲まれて寒風が遮られ,南東面が開けた日だまりのふところ地である。有効温度が0.9°C以上の日が越冬試験期間の74%を占め,実験から得た有効温度についての越冬可能条件が満たされていた。日最低気温の極値も-3.5°Cで,低温致死温度と考えられる-5°Cに至らなかった。このような地形条件の場所が野外越冬の可能地と考えられる。
3) 冬季における大気温の日当り有効温度(X)と幼虫生息場所の日当り有効温度(Y)との間には,Y=0.54+0.68X(r2=0.7303)の関係式が得られた。
4) 無加温ガラス温室に放飼した3, 4齢幼虫は3月下旬までに31%が羽化し,28%が蛹で生存した。冬季の死亡率は41%で生存率は高かった。3月下旬の生存蛹は,その後の加温飼育ですべて正常に羽化した。
5) 無加温ガラス温室内に設けたビニールハウスの中へ放飼した3, 4齢幼虫は,無加温ガラス温室へ放飼したそれらに比べて羽化時期が早く,死亡率も低かった。
6) 無加温ガラス温室の地中に埋めた蛹は,2月中旬に20∼40%生存したが,これらの蛹はその後の加温飼育ですべて奇形成虫となった。
小島農園では、白菜や山東菜の中で越冬するハスモンヨトウを見つけたことがあります。
気象庁の過去のデータから、埼玉県所沢市の気温を調べたところ、やはり2024年1月2月は例年に比べて平均最低気温が高かったです。
ハスモンヨトウは、冬の気温が低い飯能市では死滅することが多いのに、2024年は多くの個体が越冬できたのだと思います。
ハスモンヨトウが2024年夏秋に増えてしまった理由 その1.越冬しやすい環境だった
小島農園では、秋冬野菜の畑を連作することが多いです。以前も、冬葉物の連作を続けていた畑でハスモンヨトウの被害が大きかったことがあります。(ほかにも、冬葉物の連作によってハクサイダニが増えたりもします。)
今回、ハスモンヨトウの被害が大きかったキジの畑西(1.5反)は、前年も冬葉物を栽培していました。冬の緑肥として、葉物と一緒にクリムソンクローバーも混播していて、ハスモンヨトウには越冬しやすい環境だったと思います。2月から4月にかけて、葉物が花を咲かせる前に、新芽を出荷しています。自家採取のために6月まで、部分的に葉物を残して、残りをハンマナイフで草刈りしていました。
ハスモンヨトウが2024年夏秋に増えてしまった理由 その2.夏に大豆緑肥
6月に種取りが終わり、7月上旬に緑肥大豆の種まきをしました。秋冬葉物の前は、もう5年くらい大豆を緑肥として播いています。8月中旬に刈るのですが、ほかの緑肥よりもきれいに消える上、窒素が供給されるからです。
ハスモンヨトウが多かった今年の夏は、大豆緑肥がわさわさ生えているときに繁殖させてしまったかなと思いました。ハスモンヨトウはイネ科を食べないのですが、ほかの植物はほぼ食べるようです。
8月13日に緑肥大豆をハンマナイフモアで粉砕して、8月15日に1回目の耕耘をして、8月17日に1回目の種まきをしました。
ハスモンヨトウが2024年夏秋に増えてしまった理由 その3.9月の長雨で畑に入れず草がいっぱい生えた!
8月29日、30日で合計250㎜の豪雨がありました。キジの畑は水が集まる畑で、ここまで降るとその後ずっと畑が緩くてトラクターで耕せなくなります。本当は9月1日に2回目の葉物の種まきをしたかったのですが、どうにか畑を耕せたのが9月15日、翌日また雨が降る予報だったのでその日のうちに種まきしました。今思えば、シンクイムシの母蛾がたくさん飛んでいて、ほかの虫もいっぱいいることは想像できました。
苗ものだけ、別の日に植えました。9月17日にこぶ高菜を、9月21日に山東菜、チンゲン菜、タアサイを。
次は9月21日に耕耘して9月24日に3回目の葉物の種まき。8月15日に耕耘してからもう1か月以上経過して、かなり草が多かったです。ハンマナイフモアをしてから耕しましたが、この日もシンクイムシの母蛾をたくさん見かけました。防虫ネットは、できるだけ夕方にならないうちに掛けました。15時を過ぎると蛾が飛び始めるので、蛾を防虫ネットの中に入れないように気をつけています。
食べつくされた新芽と苗と雑草、生き残った畝と苗
苗を定植したケールやブロッコリーを見ると、食害があったのでよく確認するとハスモンヨトウの幼虫がいました。見つけたものは全部取り除きました。また数日後にいくとたくさんいるので、何回か除去したのですが、結局ケールとブロッコリーは芯だけになってしまいました。
全体を見回ると大根にもハスモンヨトウの幼虫がいました。育ちの速い大根は食べつくされず、食事中だったので、手で捕まえて取り除きました。結構いっぱいいて大変でした。
小松菜、カブ、山東菜、などなど小さい種を播いたものは、いつのまにか全部消えていました。あとで防虫ネットを外した時に、たくさんの終齢幼虫サイズのハスモンヨトウの幼虫がいて、この子たちが食べてしまったのか?と思いました。防虫ネットをして隔離していたので、ハキダメギク、スギナなどなど、ネット内のイネ科以外の雑草も全部食べつくされていました。
生き残った畝がありました。
- 9月15日に耕耘して9月17日に定植したこぶ高菜の苗。こぶ高菜は大きい苗なので食べつくせなかったのと、ハスモンヨトウは辛いのは嫌いみたい
- 9月15日に耕耘して9月21日に定植した山東菜、チンゲン菜、タアサイの苗。こぶ高菜よりも食害が大きかったけれど、山東菜とチンゲン菜は結構残った。タアサイはほぼ消えた。
- 9月15日に耕したけど種まきをせず、9月21日に2回目の耕耘をして種まきをした大根とほうれん草はよく残った。
- 9月15日播きの大根。生育が早いので、ハスモンヨトウが食べきれないうちに、捕殺できたから。辛いから苦手かも。
- ルッコラ。やっぱり辛いのはお嫌いみたいです。防虫ネットをしていないところにこぼしたルッコラも無傷でした
9月15日に耕して1週間後に2回目の耕耘をしたところは虫害がなかったことから、やっぱり草が多い状態を無理やり耕耘してすぐ種まきをするのは危険だと思いました。今までは、ずっと同じようにやって育っていたので、2023年猛暑→暖冬→2024年猛暑でハスモンヨトウが大繁殖する年はだめのようです。
玉ねぎと小麦の後作ではハスモンヨトウがいなかった
キジの畑西はPh5.8でアブラナ科を育てるのは少し低く育ちが悪かったので、タカの畑Ph6.2に、キャベツと白菜とレタスの苗を定植しました。定植してしばらくして、やはりハスモンヨトウが食害を始めましたが、幼虫の量が少なく、苗も大きかったので捕殺することで被害を食い止めることができました。
タカの畑は、冬の間玉ねぎと小麦を栽培していました。玉ねぎの場所は、2024年も玉ねぎです。イネ科の小麦はハスモンヨトウが食べないので、繁殖、越冬しなかったのだと思います。小麦の後作の葉物がよかったのかもと思いました。タカの畑も大豆を栽培して、一部をキャベツ白菜用に緑肥としてつぶしました。大豆の後でも少しハスモンヨトウがいましたが大丈夫でした。
まとめ 小麦の後作で秋冬葉物がよさそう
秋冬葉物の連作は、ハスモンヨトウだけでなく、ハクサイダニも増えてくるので、小麦を間に挟むのがいいかなと思いました。
暖冬のあとは、とくに作付けを検討したほうがいいようです。
畑も一か所だと収穫が便利ですが、二か所にしておくと、病虫害が広がったときにリスク分散になります。
ハスモンヨトウの紹介
ハスモンヨトウは、どこにでもいます。イネ科以外はなんでも食べるらしい。
四角豆でもよく見ました。里芋、モロヘイヤ、ゴマ、アブラナ科、万願寺唐辛子、ナスなどなど。万願寺唐辛子は、中に入ると厄介なので、食害を見つけたら時間をかけてあちこち見て、できるだけ捕まえます。10月の寒い日の後、ハスモンヨトウが弱って柔らかくなったり、白くかびて死んでたりしました。下痢で死んでる子も。
8月21日 モロヘイヤに卵塊を発見。茶色いふわふわの中にたくさんのハスモンヨトウの卵があります。1つの卵塊から100匹は生まれるので、見つけ次第つぶしましょう!
9月1日 里芋の八ツ頭の葉っぱが枯れていて、よく見たらハスモンヨトウの幼虫がいっぱいいました。
10月9日 万願寺唐辛子でハスモンヨトウが生まれた。葉っぱには小さい穴がいっぱい。100匹は生まれているはず!と思って、食害の近くで幼虫を探します。
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