飯能プランニングコンテストに応募しようと、「のらぼう油プロジェクト」を企画しています。
野口種苗研究所の野口さんの話に、のらぼうは昔油を取っていたこともあると聞いて思いついたのです。ところが!驚いたことに、「のらぼう油はエルカ酸が多くて、体に悪いから食用油にはできないみたいだよ」と菜種油を作ってる所沢の熊さん王国の小熊さんと、日高くるくるネットの紙さんに話をうかがって知りました。ついでに、その話は、遺伝子組み換え菜種油を輸出したいカナダやアメリカの策略かもしれないということも聞いたので調べてみました。
ナタネ油有害説は誤解 オルター通信1104号 記事 (朝日新聞 1985年4月25日より転載)
http://alter.gr.jp/Preview.aspx?id=6264&cls=
「エルカ酸が多くて心臓に悪い」という話に反対しているのは、この記事くらいでした。大半は、「エルカ(エルシン)酸は毒」という書き方です。この記事は、そうだよね、昔の油はやっぱり危険じゃないよねと思う内容でした。
記事の初めのほうにはこうあります。
『エルカ』というのはラテン語の『アブラナ類』という意味で、この物質はアブラナ類に多いことから『エルカ酸』と命名され
そしてこんな結びが。
「エルカ酸の含まれる量が多いからこそ、ナタネ油。外国産のナタネには品種改良されて低エルカ酸のものもあるが、その代わりオレイン酸が多い。つまりこれはもはやナタネ油でなくオリーブ油。天ぷらのあのぱりっとした揚げ具合は、エルカ酸30~40%という在来種の国産ナタネにかなうものはありません」
オレイン酸が豊富なキャノーラ油は、もはや菜種油ではなくオリーブ油なのかー。
さて、エルカ酸が心臓に悪いという実験結果についても詳しく書かれていました。長いのですが引用します。
――エルカ酸が心臓疾患を引き起こすのではないかというのは古くから言われているそうですが。――
動物実験を重ねる
「エルカ酸を含むナタネ油をオスのラットに与えると、心臓に壊死(えし)の発生することが1955年にカナダでわかりました。それ以後、エルカ酸と心臓への毒性についての因果関係は各国で関心がもたれるようになりました。私どもも、ラットの実験に取り組みましたが、確かにその通りの結果がでます。ただし、ここで強調しておきたいのは、ラットに起きる疾患は、心筋こうそく、動脈硬化のような血管系のものでなく、心臓の筋肉の壊死に限られ、またオスだけだということです。」
他の動物実験はどうなんでしょう。
「犬、豚、猿なども行われましたが、壊死の報告はありません。ラットはナタネ油に限らず、他の食用油脂でも心筋に壊死を起こしやすい異常な資質をもっていることがわかりました。障害のメカニズムについては、私たちのところで明らかにしています。一方、人間については、ナタネ油をよく食べるフランス(1974年)、エルカ酸含有量の高いマスタード油を常食とするインド(1976、77年)、ナタネ油と同様にラットの心筋に壊死を起こすことが知られる魚油をよく食べるノルウェー(1982年)の各国で心臓障害で亡くなった人を解剖して調べた報告が出ました。フランス269体、インド100体、ノルウェー54体の中に一例も壊死の例はありません。――人間に限って、壊死以外の障害が考えられませんか。――
疫学・解剖学的にも結論
基準値も根拠なし
「インドの調査では、エルカ酸含有率の高い油を食べ続けるカルカッタ付近と、低いマドラスを比較していますが、きわ立った差はありません」
伝統的な菜種油が「危険」とされたのは、本当に残念です。ラットの実験よりも、人間がずっと食べ続けてきた経験を信頼してほしい。続きの文にもありますが、遺伝子組み換え菜種油を広めるために、伝統的な菜種油が駆逐されたのではないでしょうか。
こんなサイトもありました。こちらは、新しく作られたキャノーラ油の安全性を証明するためのいろいろな研究のようです。その中で、あのラットの研究も出てきたのですね。きっと。
低エルカ酸菜種油(レアオイル) S.W. グンナー博士 カナダ厚生省衛生保護総局食品監督局 局長
http://dbarchive.biosciencedbc.jp/archive/diam_safety_literature/LATEST/document/072/072-f007.html
自家用ならノラボウ油でも全然問題ないな。そしてエルカ酸が多いと石鹸にもいいみたい。
さて、プランニングコンテストはのらぼうで行っちゃうか?やっぱり普通の西洋ナタネ油にするか?
はじめまして。
脂肪酸について調べていてこちらのブログにたどり着きました。
エルカ酸を多く含んでいるオイルは石けんにも良いらしいとありますが、
具体的にはどのような石鹸になるものなのでしょうか。
石けん作りをしておりますのでとても興味を惹かれました。
差し支えなければ元データやソースを知りたいと思い、コメントさせていただきました。
また寄らせていただきますので、お手すきの際にでもコメント返ししていただけると嬉しいです。
お返事大変遅くなり失礼しました。
何を引用したのか忘れてしまったので、もう一度調べてみたのですが、逆の情報ばかり目にします。
エルカ酸が多い頃の菜種油は鹸化価が低かったけれど、いまは菜種油と書いてあってもエルカ酸が少ないキャノーラ油がほとんどで、オレイン酸が多くなっているので石鹸も作れると。
私の蔵書の「オリーブ石けん、マルセイユ石けんを作る: 『お風呂の愉しみ』テキストブック」の文章を見つけました。ご参考ください。
https://books.google.co.jp/books?id=EUaIS1LhdxQC&pg=PA87#v=onepage&q&f=false
当時いろいろ調べたのですが、間違い書いてしまってごめんなさい!
コメント返しを頂きましてありがとうございます!
こちらこそお伺いするのがすっかり遅くなってしまい失礼しました。
ますます石けんにしたらどんな感じになるのか試してみたくなってしまいました。
昔ながらのエルカ酸の多い菜種油は手に入れられないものでしょうか。
市販の菜種油はどれも改良されたものばかりで、
タネから自分で栽培してもいいかと思い、
タネを探してみましたが現在扱っているところが見つかりません。
どうやら好奇心が強すぎるようです。。
突然のご質問でしたのに丁重にお答え下さりありがとうござしました。
ノラボウの油には、本当は人間の心臓によいエルシン酸
が多く含まれているのですが、在来の菜種と比較されたことは、ございますか?
(キャノーラ油は、遺伝子組み換えのカナダの菜種?でエルシン酸が少ない)
知人が、のらぼうで検査してもらったことがあるそうです。エルシン酸が40%かそれ以上、在来のアブラナ科と同じように高い割合で含まれていたと聞きました。
脳卒中を起こしやすいラットにカノーラ菜種油を与えると、大豆油群に比べ4割ほど寿命が短縮しました。餌中の油を10%から2.5%に減らしても、まだ寿命短縮作用は認められました。従来の高エルカ酸菜種は、さらに毛羽立ち、症状はよりひどい状態でした。ビタミンK2-骨ホルモン(オステオカルシン)ー各種臓器の連携を阻害する結果です。
菜種油は子供に使わないでください。
日本脂質栄養学会の初代会長の奥山さまからコメントいただき恐縮です。
こどもに与えることへの警鐘もありがとうございます。
2014年に記事を書いたときに疑問だったのですが、ラットの研究と人間では、やはり同じことが起こるのでしょうか?引用した記事は削除されてしまいましたが、インドでエルカ酸の高いカルカッタと低いマドラスとで、際立った差がありませんと書いてありました。脳卒中を起こしやすいラットという病的なラットの実験結果ということですが、普通のラットではどうだったのかと思いました。そして、人間だとどうなのか。フランスの友人も、非加熱の菜種油をいっぱい摂取していると聞きました。
菜種油は収穫しやすいですが、ゴマを5kg収穫するのの大変さ。エゴマを1kg収穫するのの大変さ。ゴマと荏胡麻は、もったいなくて油にはできません。のらぼう油を作る場合は、石鹸に使うなどもいいかもしれません。
ちなみに、ネズミはミントが嫌いですが、人間は平気で食べます。ネズミに毒で人間には少量では毒にならないものも多く存在すると思います。
エルカ酸が「うっ血性心不全」のリスクを高めるということは、近年、ケンブリッジ大学 栄養疫学 今村文昭により、疫学的に追証されております。
これは、人間を対象とした論文です。
Imamura F, Lemaitre RN, King IB, et al. Long-chain monounsaturated Fatty acids and incidence of congestive heart failure in 2 prospective cohorts. Circulation. 2013;127(14):1512-21.
https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.112.001197
また、エルカ酸の心毒性についてはじめて取りざたされたのは1950年代のことです。
それを受けてカナダの研究者が、エルカ酸が少ないスカンジナビア系のアブラナを輸入しブリーディングに成功させ、その品種で作った油をキャノーラ(CANadian Oil Low in Acidの略)と名づけ、北米に普及させたのは、遺伝子組み換え製品などが生まれるずっと以前の話です。
> 遺伝子組み換え菜種油を広めるために、伝統的な菜種油が駆逐されたのではないでしょうか。
とするのは明らかに間違っています。
ご自身の信条で菜種油を摂取されるのはご自由ですが、それを他人に勧めるのはいかがなものでしょうか。
もぐもぐさん、追証されているというお話ですが・・・
論文では(血漿リン脂質内のエルカ酸構成比が比較的高い)ミネソタと全米のデータを比較した結果、鬱血性心不全と相関性がありそうだ、というだけの話で「追証性」という単語を使えるレベルのデータとは到底呼べないと思いますが。
そもそもミネソタはアメリカ最北部で冬は厳しく、また年間でも一日でも寒暖差が激しい土地でありそもそも鬱血性心不全になりやすい環境といえます。
これだけではアメリカによくみられる欲しい結論を得るために作成した我田引水の調査論文だな、という印象しかございません。