無肥料自然栽培勉強会2018の様子

今年も1/27(土)28(日)に無肥料自然栽培勉強会が東京ビックサイトで開催されました。


参加者60~70名はいたでしょうか。南は九州から北は北海道まで、全国各地から自然栽培の猛者が集まります。小島農園では、就農直前の2013年1月から毎年参加しています。

小島農園が勉強会に参加する理由は、

  1. 大先輩にあうことで、自然栽培に向かう心意気、姿勢などたくさん学ぶことができる。自然栽培30年40年のベテランが後進のために集まってきてくれています。
  2. 同期とあうのが楽しみ。同じ頃に農業をはじめた京都のRed Rice 自然農園さん、ちょっと先輩の岐阜の和ごころ農園さんなど、毎年お互いの成長を楽しみにする仲間です!
  3. 野菜部門の技術情報を供給するため。情報を提供する側になってきています。

さて今年の勉強会の中で、私の心に残ったことを少し紹介します。

GAP認証 塩田彦隆先生

初日午前中は、有機JAS認証やGAP認証をしている(株)北海道有機認証センターの塩田所長がGAPについて講演しました。

第三者認証と言って、生産者と消費者ではない外部の機関によって、生産者の生産物の安全性などを認証してもらうことです。農業では有機JAS認証などがあります。今は、GAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)というのがあり、世界で使われています。日本の農作物にもGAPが求められているようです。ちなみに英語を直訳すると「農業で実践してよかったこと」で、しっくりきます。

GAP認証はお客様に直接お野菜を販売している小島農園には不要だと思っていたのですが、取りいれたら作業性がよくなりそうなので、今年から少しずつ取り組みたいと思いました。会社員時代、プライバシーマークを取得したので、個人情報の管理が変わりました。どの顧客情報をどうやって管理するか。そのとき、どういうことが発生するリスクがあるかをすべてリストにして把握するようになりました。GAPも似ているところがあります。すべてを問題が発生しないようにするのではなく、どこに問題が潜んでいるかを洗いだし、優先順位をつけて、リスクがあるけれど今は対応しないということもありなのです。

農産物の安全性、環境への配慮、労働安全と労務管理、農場管理と販売管理などがあります。
片付いていない農場や、危険がある箇所の写真などが紹介され、分かりやすかったです。

発表1. 稲作 熊本の稲本薫さん

最初に、熊本の稲本薫さんが発表しました。自然栽培が慣行栽培(あたりまえの農業)と呼ばれることを願っていて、規模拡大して今では水稲8町、全部無肥料自然栽培を実施しているそうです。トラクターも大型を購入するなど、攻めの農業をしています。使える補助金はなんでも使うといいとおっしゃってました。

稲本さんは、ジャンボタニシによる除草を始めた人です。(ジャンボタニシを、外から田んぼに持ち込むのはダメ。周りの田んぼが困るから)

慣行栽培から1年目で無肥料を成功させるコツは、半不耕起(5㎝以内の耕耘)だそうです。
雲霞(うんか)が中国から飛んできて、田んぼが全滅することがあるそうです。稲本さんの自然栽培の田んぼは無傷だったそうです。

質問時間に、山梨の小黒さんが、稲本さんのパッションについて追及していました。そのやり取りも面白かったです。

発表2. 畑作 山梨の小黒農場さん

小黒さんは、栽培技術3分、心について15分喋ります!と宣言しての発表でした。栽培技術は、夏のサラダセットについてです。
いろいろありますが、私はルッコラが浸みやすく、浸みているときは収穫しなければまた元氣になるということです。
収穫したらすぐ保冷庫に入れると葉物が長持ちすること。
夏場の種まきは、蒸れないように株間を広げること。

心の在り方は、ぜひ勉強会に参加してください!本人の言葉じゃないと、なんだか違うものを伝えてしまいそうです。栽培技術が確立してくると、今度は心の在り方が大切になってくるのだなと思いました。

発表3.果樹 おととわ 太田 欽也さん

芸術家チームが農業をしているようなおととわさんの発表でした。小島農園のように、畑に人を呼んでいろんなイベントをしていました。
こちらも、直接発表をみないと伝わらないなー。

発表4.流通 サンスマイル 松浦さん

GAP認証、自然栽培の現状など教えていただきました。例えば、東京の大きな結婚式場では、披露宴で使う食材をすべて自然栽培にしたいと思っているとか。そのためには、たくさんの自然栽培の食材が必要になるそうです。

小島農園のお野菜は流通には乗らないので、認証の必要性とか、自然栽培の野菜を増やそう!規模を大きくしよう!とかはあまり興味ないのですが、でも松浦さんが頑張ってくれているおかげで、たくさんの自然栽培農家が助かっていると思います。

発表のときか、他のときか忘れましたが、「PL保険(生産物賠償責任保険)」のことも言っていました。他の方も、年1000円ですよ。とおっしゃっていました。流通に乗せる方は加入したほうがいいようです。

全体パネルディスカッション

たくさんの話があったのですが、印象が強かった話をいくつか紹介します。

愛知県の「渥美フーズ」の渡会社長がいらっしゃいました。私は知らなかったので、ただ優しそうな方だなと思いました。渥美フーズではスーパーマーケットが5店舗、新たにレストランもはじめたそうです。従業員が500人もいると聞いて驚きました。自然栽培のお店は、硬いところが多いけれど、浜松のお店はカジュアルにしているそうです。若い人たちが気軽に立ち寄れるように工夫しているとか。優しい中に秘められた熱い思いがありそうで、お話聞くことできて嬉しかったです。

発表で小黒さんが「愛」について取り上げたのも関連して、「愛」についていろんな人が語りました。毎年事務局を担当してくださっている島田さんの話もぐっときました。自然栽培を始める人の多くは、何か大きな出来事があって、自然栽培に出会って、農家になったり、小売店になったりしているんだなって思いました。作物に対する愛、お客様に対する愛、一緒に働く仲間への愛、家族への愛、愛がいっぱいです。

パネルディスカッションの時間ではなかったかもしれませんが、農福連携の話も出ました。小島農園でも、いつか障碍を持った方と畑で作業をできないかな。畑で働くことはきっと心と體にいいだろうと思っています。実際に施設外就労を受け入れた農家さんの話を聞いたり、具体的な金額の話もしました。サンスマイルの松浦さんは、農福連携の施設が70くらいに増えたけれど、指導できるのは佐伯康人さんなど少数で、ぜんぜん足りない状態。ぜひ、みなさん近くの農福連携を手伝ってあげてくださいとのことでした。

京都の無施肥無農薬栽培調査研究会の方もいらっしゃいました。岡田茂吉さんの自然農法と関係が深い団体です。そういえば去年は、ナチュラルハーモニーの関係者も参加されていました。自然栽培はいろいろなグループがあるのですが、サンスマイルの松浦さんがいろんな人に声をかけてくれ、いろんな人に会うことができます。

2日目 発表5 弘前大学 黄 考春先生

自然栽培の歴史や現状などを伝えてくれました。岡田茂吉さん、福岡正信さん、藤井平司さん、川口由一さん、木村秋則さん、いろんな人がいます。

畑作部会

畑作と稲作に分かれて、ファシリテーションをしました。10時半~16時半とみっちり話し合いました。

さつまいもの苗床の作り方
芽が出るまでは水やりをしない
電熱線をつかって20度にあっためる

土づくりでしていること
・小島農園では、ごく痩せていた土地が、大豆と麦を4年栽培することで地力アップしてきた。地力の高い畑では、夏にソルゴーを栽培して7月に粉砕してすきこんで9月に冬野菜を育てている
・地力の低い畑では、ソルゴーは分解できないとおもってエン麦を育てている。
・地力の低い畑で、緑肥の分解が間に合わなくて大根が苦くなったことがある
・ソルゴーとヘアリーベッチの混植

自然栽培の野菜の味の違いは
おすすめの加工品、野菜は?
・小松菜!小松菜は売れる。どんどん小松菜つくってー!
・紅芯大根、タケノコ白菜
・切り干し大根は、自分で作れば?切り干し切る道具が10万円で売っていて、冬の雨上がり(ほこりが飛ばない)風のある日に、大根干せば1日で乾く。トラック1杯分1日で干すよー。

などもっともっといろいろ
自然栽培の味の違い
・有機質の多い畑だと人参が甘くなり、痩せている畑だと人参臭さが強くなる
・生育がよくない畑の葉物は苦くなるなど。

固定種野菜ってどうなの?
・固定種野菜にこだわって、苦いきゅうりとか作っている人がいませんか。固定種野菜にこだわる理由は?
・固定種野菜は、どんどんなくなっているので守らないとと思っている。種の交換会という活動をしている。
・自然栽培の中で、固定種野菜はほとんどないので、こだわっている人はこのままこだわって作ったほうがいい

自然栽培はどんな味がするって表現していますか?
トラクターのかけ方
値段のつけ方
ビニールハウスを立てない育苗の仕方
計画を立てているか?
設備投資はどうしているか?
農地の見つけ方

畑作部会には、小売りや流通をしている方が多くいたので、小売り側の氣持ちも聞くことができて面白かったです。

去年稲作部会では、専門的な話が多かったです。それに比べると畑作部会の質問は初歩的なものが多かったです。
稲作では自然栽培が確立してきていること、そして稲に特化しているので専門的な話がしやすいのかもしれません。

畑作とひとくくりにしても、ゴマだけ作っている人、100種類くらい作っている人など様々です。なかなか、1つのことを深く掘り下げることができません。畑作のファシリテーションで、いくつか改善点が見つかったので、来年は積極的に運営側に関わっていきたいと思いました。たとえば、参加者一人一人の名前が分からないので、10m離れていても見れる大きな名札を作るとか。

愛知県の棚宗サラダ園の石川さんと、いっぱい情報交換できたのが嬉しかったです。

最後に

自然栽培が増えているって感じました。今までずっと一人で寂しくやってきたけれど、隣の田んぼで自然栽培の仲間ができたという方。山梨の小黒農場さんの近くで畑をはじめた方。そして北海道で自然栽培をしている方のところで、4月から一緒に働くことになった若者。飯能でも、自然栽培農家が4件います。4月からは有機栽培かな?で就農する仲間がいます。みんなずっと続けてほしいなって思います。

2017年の勉強会で講演をしていただいた弘前大学の杉山修一先生が、今年も参加していました。温厚で、頭がよく、全体をまとめるのがうまく、場の調整役としても、とてもいい発言をされていました。心や愛が大切という流れの中で、それでも技術は大切ですよねと、くぎを刺すこともできる、自然栽培を引っ張っていくうえで、重要な位置にいらっしゃると思います。

同期のRedRice自然農園の赤穂さんには負けましたー!小島農園の2017年の売上を公表したのですが、赤穂さんは100万円上でした。時間の管理、売上管理、作付計画、作物の選択など、しっかり考えて管理しています。高い目標に向かって進んでいます。私たちは、そこまで高い目標は立ててませんが、売上の管理はしたいなと思いました。いつも、はじめに小島農園のレポート読んでくれてるそうなので、また今年も1年頑張って、いいレポート書きたいと思っています。他の方も、うちのレポート褒めてくれて嬉しいです。みんなの技術が向上するためのレポート作成だと思うので、自分のできることを精一杯やっていきたいと思います。

農業5年目となり、勉強会でも就農する人をサポートする側になってきたと感じました。参加者のレポートもしっかり読んで、アドバイスできることはどんどんしていきたいと思います。声をかけたり、掛けてもらったりしたので、畑に来てくれる人が多そうです。農家仲間にも、畑を楽しんでいる様子をどんどん発信していきたいです。

カテゴリー: 勉強会
2 comments on “無肥料自然栽培勉強会2018の様子
  1. 鈴木奈美子 より:

    こんにちは
    勉強会の様子を取り上げて下さってありがとうございます
    今回は、行けませんでしたが、機会があれば、行ってみたいと思います
    我が家の人参は、人参くさい人参と思っていたら、
    有機質が足りなかったのですね

    私は、以前、稲刈りの時に、時々お会いしましたが、お忘れかも知れません
    自然栽培の家庭菜園を、やっています
    どんどん進化しておられる小島さんを見て、凄いなあと、思っています
    今回は、同期の方に負けたとか。
    上には上がいるんですね
    フェイスブックも、時々覗かせていただいています
    これからも、情報提供、宜しくお願いいたします

    • なおちゃん より:

      こんにちは。勉強会に興味があるんですね。稲刈りのときに時々お会いするとは、じゅらくか?しんくんの田んぼかな?
      同期にはびっくりでした。まだまだ規模拡大を目指しているようです。

      人参、一生懸命生きて人参臭いのも、生命力があっていいですよね。
      自分の好みの野菜は、甘いのがいいか、それとも生命力があるほうがいいのかとかによって、自然栽培でもやり方がいろいろありそうです。

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