こどもたちの夏休みの自由研究で、田んぼの生きもの調査をしました。せっかくなので私流にもまとめました。
2021年の生きものたちが、10年後、100年後、どう変わっていくのか?記録を続けたいです。
今回、いろいろ教えてもらったすずめ農園の美穂さんと、田んぼの生きもの調査をしているむかっち先生から、田んぼと田んぼのいきものを観察すると、生き物が「見えるようになる」ということと、そして見えるようになると、「見る」から「考える」へと、視点が移っていくと教えてもらいました。
なぜいるのか?なぜいなくなったのか?なぜ移動するのか?いつ?どうして?田んぼの生きものを知ると、なぜがどんどん増えてきました。そして何より、田んぼの生きものを観察すると、田んぼと田んぼを取り巻く環境がすごく楽しく生き物にあふれた素晴らしいところだということに気が付きました。田んぼにいること、畑にいることが、今までよりもずっと楽しくなりました。
小島農園のコイ・ナマズの田んぼ
たんぼの履歴
①たんぼの周辺環境:飯能市下川崎 なだらかな丘と林、小川がある。
②除草剤、殺虫剤、殺菌剤なし。
③田起こし3月に1回5月に1回、代かき2回
④田植え6月6日
⑤中干特になし
⑥冬季の状態乾田
コイの田んぼは、2020年も田んぼでしたが、ナマズの田んぼは、2020年まで畑として利用していました。
傾斜地に茶畑や麦畑、その奥に田んぼ、水路があり、さらに林もある。多様性のある地域。
参考にした本
宮城県のすずめ農園さんが毎年田んぼの生きもの調査をしていたので、やりかたを相談したところ冊子があるということで、「すずめ農園の田んぼのいきもの」という冊子を送ってもらいました。様々な生き物があり、その見つけ方も分かりやすく参考になりました。「田んぼの生きものおもしろ図鑑」も読み、どこにどんな生き物がいるか知ってから探すと見つけやすかったです。
すずめ農園さんと生き物観察をしている「むかっち先生」がいます。むかっち先生にお返事もらえないかもと思いつつ、こどもの自由研究で分からないことを質問してみました。
8月17日に田んぼで稲の葉っぱが2枚くっついているのがあって、それを開いてみたら、小豆みたいなのが2つありました。何の虫だろうと思いましたが、インターネットで調べても全然わかりませんでした。むかっち先生が次のように教えてくれました。
蛹の横に、コブノメイガと思われる幼虫の死体があることから、コブノメイガ幼虫に寄生していた寄生バエが、コブノメイガ幼虫が作った稲の筒の中で、体外に脱出し、筒の中で蛹になったのだと思います。
まさか巣の中にいたのが、イモムシに寄生していたハエのさなぎだったとは、驚きました。田んぼには、生き物の不思議がいっぱいです。
田んぼにいた生き物
田んぼに水を張った6月から、生き物調査を始めました。
見つけた生き物の表と写真を最後に添付しています。
田んぼの生きものおもしろ図鑑の目次にある生物名を表にしました。
1.コイとナマズの田んぼで見つけた生き物を青色にしました。
2.コイとナマズの田んぼで見つけたけど、おもしろ図鑑に掲載していなかったホウネンエビとフナを赤字で追加しました。
3.近くの田んぼや川で見つけたものは黄色にしました。
4.少し離れたきれいな水の流れる田んぼで見つけたものはピンク色にしました。
いろんなトンボ
生き物調査をして、いろんな種類のトンボやヤゴがいることに気がつきました。シオカラトンボ、アキアカネ、ミヤマアカネ、ウスバキトンボ、アオモンイトトンボ、ヤンマ。ヤゴの形がずいぶん違います。
トウキョウダルマガエルのおたまじゃくし、コガムシ2匹、シオカラトンボのヤゴ5匹、アキアカネのヤゴ1匹捕まえました。アキアカネのヤゴの方が大きいです。ヤゴの形の違いは、今回の生き物観察ではじめて違いを確認できました。
7月18日の朝、長女が稲についていた羽化したヤゴの殻をいっぱい集めたところ、ナマズの田んぼで集めたヤゴと、コイの田んぼで集めたヤゴの形が違いました。調べるとナマズの田んぼにはウスバキトンボのヤゴだけ、コイの田んぼにはアキアカネのヤゴだけいました。
2020年まで畑として使われていたナマズの田んぼには、秋に産卵するアキアカネのヤゴはいなくて、春に南から飛んでくるウスバキトンボのヤゴがいたのでした。ウスバキトンボは聞いたことなかったので、南から大移動してくるその生態に驚きました。
アキアカネは、生まれてすぐに山に行くそうです。そして9月下旬に山から田んぼに戻ってきます。夏の暑い時期に田んぼの上を飛んでいるのはウスバキトンボなんだそうです。
7月27日夕方のトンボの観察を長男の自由研究から紹介します。
トンボが田んぼ、畑、水路の上を飛んでいた。トンボがいるところといないところがあった。トンボは、16時40分頃より、17時30分過ぎのほうがたくさんいた。下川崎から平松芦苅場の田んぼを車で通ってみた。どこにもとんぼが少しいたけど、田んぼをジャンフィリップさんの田んぼのあたりと近くの水路にたくさんトンボがいた。用水路でトンボが、羽化してきたばかりの蚊の仲間を、パクパク食べていた。トンボは大きなものを狙って食べていた。それぞれ、下係と上係がいるようで、下のトンボが食べ逃したかのを、上にいるトンボが食べていた。
トンボは赤っぽい胴をしていて、アカネっぽかった。シオカラトンボは、ほとんど見れず、10分ほどいても2羽ほどしか観察できなかった。こいの田んぼの隣の畑にいたとんぼが、コイの田んぼに来ると、なぜか壁があるのかのように畑のほうへ、戻っていった。コイの田んぼからの800m上流の草がぼうぼうの畑では、とてもたくさんの燕が上空を飛んでいて、トンボの姿は見られなかった。
「胴が赤っぽくてアカネっぽかった」というのは、7/27と真夏だったのでウスバキトンボだったかもしれません。
シオカラトンボは、8月3日ごろにたくさん羽化しました。2021年は中干をしなかったので、シオカラトンボが死なずに羽化できたんだと思います。中干によって死ぬヤゴがいっぱいいるそうです。
長男が8月18日の日暮れ時のムギワラトンボの様子を次のように書いていました。
田んぼの上を飛び回るトンボはいなかったけど、稲の葉に止まっているムギワラトンボがいっぱいいた。よく見ていると、近づいてきた小さな虫を頭を動かして見つけて、近くに来たのを飛んで行って捕まえて、また稲の葉っぱにとまって口をもごもごさせながら食べていた。30秒から1分に1回くらい食べてた。
アキアカネの大移動
アキアカネの大移動をはじめてみたのは、2015年9月27日夕方でした。
2015年9月27日ごろ、畑で作業したら当時6歳の長男が「トンボがいっぱいいるよ」と空を見ていたのでした。大量のトンボが北西の方から東南の方に飛んで移動していました。見える範囲だけで1000匹はいて、20分くらいずっと同じ方向に飛び続けていたから、1万匹以上いたんじゃないかな?とても異様な光景でした。
調べたら、羽化したアキアカネはすぐに山に移動して、夏の間は涼しい山で過ごすそうです。秋になって一斉に田んぼに戻ってくるそうです。
2021年9月20日17時半に自宅の上を移動するトンボを発見!2015年ほど大量ではなかったけど、みんな一心に同じ方向に向かってる。あのとき時間に追われてできなかった、追っかけをしてみました!
車に乗ってトンボのゆくほうに向かいました。トンボの時速は20㎞くらい。途中、自宅から500mくらいのところの森に入ってくトンボと、さらに田んぼを飛び続けるトンボ。さらに日高方面に進み、最後は日高カントリークラブのあたりに行ったようです。この日は森にとどまって、そこからさらに移動を続けるのか?この先には川越の田園地帯があります。
2021年9月22日は、トンボがいる田んぼで里芋掘りしていたから、15時ごろからトンボチェック。トンボいるけど、田んぼの上で遊んでる感じなの。電線で休んでいたり。でも16時15分ごろに急に移動をはじめた。「あ、移動した!」って思って、学校に長男を迎えに行き、巾着田の方までアキアカネの大移動の調査。
9月22日は移動するトンボが少なかったみたい。県道15号の上空を北から南に渡っているトンボがちょこちょこいました。うちの近くを飛ぶトンボも、9月20日のほうが勢いがあった。今は、この辺にしようかな?って悩みながら飛んでる感じ。無心で先へ先へと進む感じじゃない。
長男は21日に自転車でも単作をしていて、聖望のグラウンドのあたりも団体がいたよって教えてくれた。ほかにも、トンボの合流地点があったとか。
晩生の稲のためにまた水を張った田んぼに、「ここにしようかな?」って思ってそうなトンボがいました。後日田んぼで産卵しているアキアカネを見ました。
近所の方に昔の田んぼの生きものの話を伺ったとき、アキアカネはもっといっぱい飛んでいたと言っていました。アキアカネの大移動、2015年にみたよりもいっぱいいたのかなぁ。
アキアカネについて本で調べたところ、稲の苗を育てる育苗箱に使われる殺虫剤の種類が変わってから、アキアカネはずいぶん減ったそうです。うちでは農薬を使わないし、中干もしないのでたくさんのアキアカネがトンボになっています。
ちなみに、9月8日ごろに毎年顔振峠にある畑にいくのですが、そこにはトンボが結構飛んでいます。アキアカネかな?顔振峠は標高500mで近くに標高800m級の山もあるので、このあたりの山でアキアカネが夏すごしているのではと思います。
カエル
田んぼでは、アマガエルとトウキョウダルマガエルをよく見ます。近くの他の田んぼや水路では、アカガエルとシュレーゲルアオガエルを見たことがあります。
田んぼに水を張ってすぐ、6月3日にはカエルが卵を産んだのを見つけました。
7月3日には、もうカエルになった子が出てきました。トウキョウダルマガエルのおたまじゃくしは大きかったです。
7月8月は配達の時に田んぼを通るようにしていました。一番カエルの合唱の声が大きかったのは、5月に水を張ったときでした。7月に中干をしている田んぼでは声がほとんどしませんでした。そして、8月5日の立秋をすぎたらカエルの合唱は聞こえなくなり、虫の鳴き声が聞こえるようになりました。
ガムシ
ガムシという昆虫の存在を知ったのは2020年、コガムシの卵のう(卵の入った袋)を見つけてからでした。
田んぼに浮いていて、葉っぱにくるまれていて、白いふたがあって、角があります。ヒメガムシの卵のうは、ちょっとこぶりで角が長いようです。
田んぼにゲンゴロウがいるなって思っていましたが、実はガムシの仲間でした。幼虫が肉食、成虫は草食だそうです。ガムシは絶滅危惧種になっているそうです。
ゲンゴロウ
ゲンゴロウは日本に140種もあるそうで、ゲンゴロウと呼ばれている大きいゲンゴロウは、幼虫で8㎝、成虫も3.5cm~4㎝もある。ゲンゴロウは、環境省レッドデータブックには準絶滅危惧種として登録されている。
生き物観察では、コシマゲンゴロウを見つけた。
くもたち
8月18日には、小雨が降っていて、朝6時半にクモの巣がたくさん見えました。田面と水平に網を張るアシナガグモやサラグモの仲間と田面に垂直に網を張るコガネグモがいることを知りました。
同日の18時半、日暮れどきはとてもとても美しい光景を見ました。すべてが金色に光るキラキラ時間です。長男の自由研究からその感動を引用します。
田んぼにクモの巣がいっぱいあった。近くで見ると、小さいクモやアシナガグモが、巣を作っていた。もうできあがったのもあった。クモの糸が飛んでいた。巣に小さい蚊みたいなのがついたら、寄ってきて巣の中心に持って帰った。コガネグモは、糸でぐるぐる巻きにしたけど、小さいクモは中心に持って帰った。夕日でクモの糸やクモが金色に輝いてきれいだった。遠くに飛んでいるトンボの羽もきらきら光っていて、大きく見えた。蚊の仲間がいっぱい飛んでいて、蚊柱もいくつもあった。
みつばちが稲の穂に近づいて、花粉を集めているようだった。足には花粉団子がついていた。田んぼの上を飛び回るトンボはいなかったけど、稲の葉に止まっているムギワラトンボがいっぱいいた。よく見ていると、近づいてきた小さな虫を頭を動かして見つけて、近くに来たのを飛んで行って捕まえて、また稲の葉っぱにとまって口をもごもごさせながら食べていた。30秒から1分に1回くらい食べてた。
クモの巣は、夕方に張って明け方にしまうそうです。雨の日は朝でも観察できるようです。田んぼにこんなにたくさんのクモが棲んでるなんて驚きます。ちなみに、クモは農薬に弱いと言われていますが、慣行農法の近隣の田んぼにもたくさんのクモの巣がありました。
ナガコガネグモの網に小さいバッタを置いてみたら、サッサっと寄ってきてあっという間にぐるぐる巻きにして、また網の中心に戻った
蜘蛛はほかに、徘徊するクモがいます。
2020年9月22日の稲刈りの時には、ナガコガネグモの卵がありました。2021年もたくさんの卵を見つけました。
顕微鏡で見る田んぼの生きもの
8/7には顕微鏡で主に藻と藻の中で動き回る微生物を観察しました。藻の中にはたくさんのミジンコみたいなのが動き回っていました。捕まえやすい大きめの微生物はカイミジンコでした。慣れてくると少し小さいケナガミジンコやケンミジンコも捕まえて観察することができました。名前が分からない生き物もいました。
アミミドロがきれいでした。
田んぼで見つけられなかった生き物
きれいな水が必要な生き物が見つかりませんでした。タガメ、ゲンゴロウ、ホタルです。
タガメは、女影の田んぼにいるという情報を聞いて、許可をいただいて知人の田んぼを探したら、タガメの仲間のコオイムシを見つけました。ホタルの幼虫が食べるカワニナもたくさんいました。
コイの田んぼと女影の田んぼの違いは、
1.女影の田んぼの上流に民家が少ない。生活排水がほとんどない。湧き水。コイの田んぼは、宮沢湖から引いている水で、途中に平松地区200件分くらいの生活用水が入り込む。
2.女影の田んぼは自然掘りで、コイの田んぼはコンクリートの水路から水を入れている
コイの田んぼは、基盤整備がされていて1.5反と大きくて使いやすい田んぼです。暗渠があるので排水もすぐできます。冬はしっかり乾き、田んぼとして使いやすいです。水路がコンクリートだったり、冬に水がなくなることは、生き物にとっては生きづらいようです。生活排水で水が汚れたことも生き物にとって住みにくくなっていることを改めて感じました。田んぼに生えるアミミドロという藻は、富栄養な水で育つ藻です。生活排水で水が富栄養になっているのかなと思いました。
田んぼで出会った生き物リスト
6月3日 | カエルの卵 |
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7月3日 | 魚(生まれたばかりで袋付き) |
魚 3㎝ | |
魚 アブラハヤ? | |
おたまじゃくし 3㎜ | |
おたまじゃくし 4.5cm | |
足の生えたおたまじゃくし | |
しっぽの残っているカエル | |
ヤゴ 12㎜くらい アキアカネ? | |
ヤゴ 23㎜くらい アオヤンマ? | |
イトトンボ | |
ガガンボの幼虫 | |
コモリグモの仲間 | |
アシナガグモ | |
ヒメガムシの卵 | |
コガムシの卵 | |
ガムシの幼虫 | |
エビ | |
モノアラガイ | |
ヒル 3㎜ | |
イチョウウキゴケ | |
ウキクサ | |
カマキリ 1.5㎝ | |
イモムシ |
7月13日 | トウキョウダルマガエル |
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アキアカネ(羽化したところ) | |
イオウイロハシリグモ | |
ナガメカメムシ | |
7月18日 | おたまじゃくし 4㎝ |
ミヤマアカネ(トンボ) | |
ウスバキトンボ(羽化したところ) | |
シオカラトンボのヤゴ 9㎜ 5匹 | |
アキアカネのヤゴ 20㎜ | |
カワゲラ | |
コシマゲンゴロウ | |
コガムシ 2匹 2㎝ | |
コガムシの卵 | |
フタバカゲロウの幼虫 | |
アミミドロ | |
8月3日 | イナゴ 3.5㎝ |
シオカラトンボ 羽化したばかりが100匹以上 | |
8月7日 顕微鏡で観察 | |
カイミジンコ | |
ケンミジンコ | |
ケナガミジンコ | |
謎の生物 その1 | |
謎の生物 その2 | |
アミミドロ | |
8月17日 | トウキョウダルマガエル |
シオカラトンボのヤゴの抜け殻 | |
イトトンボ | |
ナガコガネグモ | |
アシナガグモ | |
コメツキバッタ | |
オンブバッタ | |
コオロギ | |
カタツムリ | |
コブノメイガの寄生バエ | |
ヤマカガシ | |
ツバメ | |
8月18日 朝6時半 小雨 | コガネグモの巣 |
8月18日 日暮れ時 | ムギワラトンボ 100匹以上 |
小さいクモ | |
アシナガグモ | |
蚊柱 |
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