無肥料自然栽培勉強会に参加しました

1/28, 29と東京ビックサイトの会議室で開催された無肥料自然栽培勉強会に参加しました。毎年1月下旬に開催され、全国の自然栽培農家が集まります。

去年までは、丈直丈丈の順で、一人が勉強会に参加して、一人はこども担当でした。今年は、なんと千葉の両親に東京に出てきてもらい、2日間こどもたちと遊んでもらって、二人で勉強会に参加しました。こどもたち、一日目は上野動物園に、2日目は品川水族館などに行って、とってもとっても楽しい時間を過ごしたようです。

さて、勉強会ですが、すごいんです。大先輩が来てくれます。北海道北見の秋葉農場の秋葉和弥さん(祖父の代から自然農法66年)、宮城県の成澤さん(有機栽培10年、自然栽培10年)、岩手県の阿部知里さん(自然栽培10年)、熊本県の稲本薫さん(自然栽培40年)など大御所が、後進を育てるために毎年出席してくださっています。野菜部門でも、師匠であり勉強会の実行委員長の明石誠一さん、nicoでもおなじみ渋谷農園の渋谷正和さん、愛知から棚宗サラダ園の石川寛子さん、山梨の小黒農場さんが、新規就農組をサポートしてくれました。

就農時期が同じ頃の、岐阜の和ごころ農園さん、奈良のRed Rice自然農園の赤穂さん、お互い5年連続参加です。

毎年内容は少し変わるのですが、今年は弘前大学農学生命科学学部教授の杉山修一先生が、約2時間研究内容を発表してくださいました。それから、畑作の秋葉農場さん、果樹のイベファームさん、稲作の成澤さん、そして農副連携の佐伯康人さんが30分ずつ。初日最後はパネルディスカッションです。2日目は、稲作、畑作、流通に分かれての分科会。私は無謀にも稲作部会に参加しました。午前2時間、午後1時間ちょっとしっかり話し合えます。

尊敬する秋葉農場の秋葉和弥さん

秋葉和弥さんは、北海道の北見というとても寒いところで約40町(40ha) の畑で自然栽培をされています。大豆、小豆、金とき、手忙、豌豆、じゃがいも、人参を栽培されています。2014年に初めてお会いしたときに、私のレポートを読んでくださっていて「おー、小島直子か。」と返事してくださりとても嬉しかったです。毎年秋葉さんがレポートに心の在り方について書かれているのですが、心に響きます。2016年の勉強会のレポートから抜粋します。

大自然の偉大な力に感謝し、その力を最大限生かさせて頂く想いを内に秘め、淡々と日々正確に判断し、着実にやるべき業務を積み上げ続けていくところに、昔人の言われた大百姓(おおみたから)への道のりに通じるものがあると信じます。

具体的には、科学的見地に裏付けられた天気予報と、長年の経験に準拠した最善の判断力が無理なくオリンピック選手がよく口にされる、楽しんで、日々心言行にいかされてくる事かと想います。

幸運にも、2日目の朝の電車でお会いして、お話しすることができました。機会があって、家族と家族の健康を一番大切とする農業を選んだのだから、どんな苦境がきても、大切なものは守っていると心を強くしていること。(秋葉さんは、去年の台風で大打撃を受けたのですが)苦境に立っても落ち込んでいないで、次にできることをやっていくこと。明るく楽しくやっていれば、周囲もまた援けてくれることなど。秋葉さんの経験から、心から発せられる言葉は、本当に心に響きました。

栽培方法に関しては、次のようにまとめられていました。

「適地適作」、「適期管理」、「適土作り」この3つの適正化努力の実践が幾度もカベにぶつかって行きついた、私の結論です。

具体的な事例もあり、とてもきわどい判断のおかげで、今年の天候でもどうにか収量をあげることができたこと、規模が規模だけに本当に素晴らしいと思いました。

なりさわ生命食産の成澤さん一家

成澤さんは毎年ご家族で参加されています。とってもとってもおいしくて元気になるお米を作っています。3年ほど前は、サンスマイルさんからお米を購入して毎日食べていました。成澤さんは、「お稲様」と呼ぶほどに稲を大切にしています。草は全部取るというのに出会ったときから感心していましたが、今回勉強会の稲作部会でいろいろな話を聞いて、すべての工程で、考え抜かれた工程、そして丁寧に仕事をされているということが分かりました。水位の管理はとても難しいのですが、その高さも変えながら、稲がすくすくと育つ環境を作っているそうです。いつか田んぼの手伝いに伺いたいです。

稲本薫さん 自然栽培を慣行農法にする

丈ちゃんは、2016年に参加したときに稲本薫さんに心打たれたと言ってました。自然栽培40年の稲本さんは、「自然栽培が慣行農法と呼ぶ時代にはやくしたい」とおっしゃっています。60を超えていても、攻めの農業を行い、田の面積を約1町増やし、ガツンと設備投資もしています。どんな方かと注目していたのですが、やはり研究熱心です。ポット苗で成苗をつくり植えるとのこと。「みのるポット成苗田植機」を使っているそうです。通常の育苗箱で苗づくりをすると田植え機で根をちぎって移植するので植え痛みがありますが、ポットだと活着がはやいそうです。育苗土は山の真土、苗代を田んぼに作り、ポットから出た根っこが田んぼの土から栄養補給するようです。知らないことばかりで、とても興味深かったです。稲本さんは、田んぼの害虫とされているジャンボタニシの除草効果に着目して、100%に近い除草効果を上げていると2015年のレポートにありました。

温厚な阿部知里さん

阿部さんは、全国食味コンクールで100点を取っちゃうような、おいしいお米を作ります。100点は、宝くじあてるより難しいと聞きました。今回、稲作部会に参加してみて、阿部さんの調和を大切にする人柄がとても印象的でした。阿部さんの地元でも、周りの農家さんと仲良くやっていらっしゃると聞いています。

阿部さんは、驚くことに、除草をほとんどしないそうです。1回だけは除草に入るようにしているそうですが、あとは田んぼに任せるそうです。1回も入れない田んぼがいくつかあって、そこで収量ががくんと下がってしまうそうですが、1回除草の田んぼでは6俵7俵(だったかな?)採れるそうです。除草に入る頃は、おたまじゃくしがいたり、生物がたくさんいるので、できるだけ邪魔したくないということです。

この田んぼの生物多様性については、稲作部会でもいくつか事例が上がっていました。成澤さんの田んぼの7割くらいで、水が濁ったということ。水が濁ると草が生えないとのこと。成澤さんの田んぼの水の暖かさも関係しているかもしれませんが、きっと濁った水は田んぼの微生物たちが作っているものだろうと。稲本さんのジャンボタニシの田んぼも、きっと微生物豊なんでしょうね。

稲作部会では、たくさんのことが話題に出たのですが、話しの中に、各自の人柄や思いが出てきて、本当に学びが多かったです。

団結力の新潟チーム

新潟からたくさんの方がきていました。すでに新潟チームとして地元で集まっているようで、稲作部会の話し合いでも仲の良さが見えました。そして米どころ新潟、さすが米作りのエキスパートがたくさんです。牽引役の宮尾さんと上野さんの人柄も素敵でした。自然栽培の仲間を増やしていこう、一人でやっている人たちを繋げていこうという志で、新しい人ウェルカム!という雰囲気がいっぱいです。集まって情報交換することで、失敗が少なくなったり、やる気をもらえたりと、いい方向に進むと思います。

パネルディスカッションで、自然栽培を普及するにはどうすればいいかという議題がありました。その中でだったか、宮尾さんの「楽しい農業を見せていこう」というという呼びかけも心に響きました。私たちが大切にしていることです。有機農業から自然栽培に転換した方が、自然栽培の田んぼには力がある、元気が出ると言っていました。有機栽培と自然栽培でも違いが出るのかと驚きました。そいて、やっぱり畑に人をどんどん呼んで、體(からだ)で感じてもらうのがいいなって思いました。

稲作部会 倒伏について

畑作は丈ちゃんに任せて、分からないことがいっぱい満載の米作りについて少しでも知りたいと思って、稲作部会に参加させていただきました。畑作部会と違って、稲作部会は真剣勝負だと聞いていたのでドキドキです。畑作仲間が3名参加していました。

稲作部会で倒伏について質問しました。去年は、150㎝にもなる神丹穂とそこまでは高くないけど「いのちの壱」が倒伏して稲刈りが大変でした。「今年は株間を40㎝に広げるのはどうかと思うけれど、他の方法はありませんか?」とお聞きしました。まず、収量を考えるなら、背の高いのにはチャレンジしないことを指摘されました。酒米「山田錦」を作っていた方が、品種改良して味は変わらないけれど背が低くなった「吟のさと」を使うようにした例がありました。次に、自然栽培2年目以降はそんなに伸びなくなるという事例。また、水管理で3つ。まず、田植え後に深水にすることで、水圧がかかり太い稲が育つこと。次に節間成長する時期には水を少なくすると伸びが大きくなくなること。そして中干しにより、水を求めて粘りが強くなること。さらに、自然栽培では、倒伏しても立ち上がる例もありました。普通1回倒伏しても立ち上がるところ、去年は4回も立ち上がったという例も。次々といろいろな意見をいただき、とてもありがたかったです。

稲作部会 浸種

冬季に1か月くらいかけて浸種する方法について、胚の力が落ちると思うけどみなさんどうですか?という声がありました。何人か試した方が、やっぱり発芽率が70%くらいになったという例や1か月だと管理が面倒だという話も。浸種の時期は酸素を欲しがるから、2日に1回は水を変えて、その時上下を変えるのも大切のようです。上の方と下の方で温度が違うから。浸種の温度では、バカ苗の話も出ました。去年は、例年より気温が高く、水温が3度くらい高い状態で半日くらい置いたためか、バカ苗が多くなってしまったとか。浸種の時点でも、苗づくりや実りに大きく関係してくるというのが感じられました。

稲作部会 育苗と床土

床土に何を使っているかという質問がありました。様々です。印象的だったのが、ポット苗の稲本さん。山の真土だけとのこと。籾がマグマの熱を求めて下に伸びる力を大切にしたいからとのことです。田んぼに苗代を作るので、ポットから出た根が、田んぼにどんどん伸びて適切な栄養補給ができるそうです。米ぬかともみ殻のボカシ+燻炭だった方は、PHが高くなるから燻炭を入れなくなったという方もいました。稲わらと田んぼの土で作る方法も紹介されてました。ワックス効果は氣をつけないとという声も。素材によっては水をはじいて育苗できなくなると。

ハイポニカのトマトの話も印象的でした。「つくば科学万博 85」で1本の巨大なトマトが1万個以上のの実をつけて有名です。ハイポニカの水耕栽培では、薄い液肥が満たされていて、その薄さも大切ではないかということ。自然栽培の田んぼでも、川から薄い栄養分が流れてきたりして、植物にとっていい状態なんじゃないかなと。

稲作部会 除草について

除草については、本当にたくさんの話が出ました。その中でも私に関係しそうなことをいくつか。

まず、チェーン除草は初期の1,2回で効果があり、その後は稲を傷めてしまうので皆さんやらなくなったとのこと。次に、カルチャ(除草機)を使うとのこと。4回までは除草効果が比例して高くなるという研究があるそう。除草効果以外に、中耕効果があり、その後稲がぐんと生長するそうです。除草機は1回だけという方も少なくなかったです。私が使えそうな除草機として「除草下駄」も面白そうと思いました。

ヒエは、自然栽培初期の頃しか見ない草だというのも面白かったです。ヒエは栄養があるところでしか育たないと。熊本の稲本さんは、外来種のホソバヒメミソハギについて警鐘を鳴らしていました。ジャンボタニシが食べない植物で、近年増えていると。杉山先生は、発表の中でスゲが増えたら大変と言っていました。2014年、2015年に借りた田んぼでは、スゲがいっぱいでした。2016年に、それを壊滅したのっぽファームさんの技はすごいなと思います。

稲作部会 胴割れ

胴割れが多かった方が、胴割れについて質問していました。周りの農家さんが青いうちに刈り取る品種だったので、刈り取り時期が問題かという質問でした。自然栽培では、遅くに刈り取っても胴割れはしないねという意見が出てきました。岩手の阿部さんは、霜が降りてから収穫するので有名です。

その方には、籾の乾燥の仕方について質問がありました。機械の設定どおり15%にしておくと乾燥しすぎることがある。先輩方は、3回くらいに分けて水分を減らしていくと言ってました。その日の天気によっても乾燥後の水分が増えたり減ったりするという話も。簡単に書いてしまいましたが、その時の話しぶり、こだわりぶりは、実際話し合いの場にいると、日々、細部まで注意して作業している姿勢が肌にビンビン伝わってきます。

大豆の力、わらの力

杉山先生の発表で病虫害について質問がありました。成澤さんが「1か所だけいもち病がでる田んぼがある」とおっしゃってました。大豆を10年栽培していた田んぼだそうです。わらも戻しすぎると病気が出るから、3年に1度はわらを外に出すと言ってました。

小島農園でも、やせやせのクマの畑が、麦や大豆の栽培を繰り返すうちに、ずいぶん元気になってきたと思います。ここで、消費者の皆さんへのお願い。ぜひ、小麦や大豆を食べてほしいです。大豆と小麦の需要が高まれば、あっちこっちの畑で肥料を与える代わりに、小麦と大豆を育てて、畑を元気にすることができます。収穫が結構大変なので、ぜひぜひ農家さんに収穫の手伝いに行ってください。自然栽培の大豆と小麦、滋味あふれるおいしさですよ。

川崎市大矢製作所 大豆選別機の紹介

川崎市から大矢製作所の大矢さんが、大豆選別機を持ってきてくれました。小川町の横田農場さんが発明した横田式大豆選別機を製品化してくださっています。

大豆は選別が一番大変なんです。この大豆選別機なら、共同購入すれば、小規模農家でも手が届く値段です。
なんと、制作ストーリーがありました。
大豆を栽培する小規模農家の方々へ

まとめ

無肥料自然栽培勉強会、本当にすばらしい集まりだと思います。普段は畑と向き合って、自分の頭と体でできる限りのことを行い、年に1回仲間と直接出会い情報を交換する。大先輩のみなさんから、技術はもちろん、毎日の心の在り方、生き方などを伝えてもらう、とても貴重な2日間です。

今年もしっかり稼いで、来年も夫婦で参加できるようにしたいな。勉強会に出ると、ほんと頑張るぞー!って氣持ちが200%くらいに上がります。私たちの生き方は間違っていない。家族を一番大切に、みんなが健やかに楽しい毎日を過ごせるのは、やっぱり今の暮らしだー!!!

2014年に参加したときのこと、こっちに書いてあります。このときは、就農1年目なのに発表をするという。
思いが集った無肥料自然栽培勉強会

カテゴリー: 勉強会
3 comments on “無肥料自然栽培勉強会に参加しました
  1. 稲本 薫 より:

    小島直子さん、ありがとうございます🍀
    良く、色々なことを記録してまとめていますね❗
    あんまり、ほめられて恥ずかしいじゃあ無いですか。
    来年の勉強会も参加します。
    よろしくお願いいたします☺
    頑張りましょうね🎵

    • たけさん より:

      稲本さん、コメントありがとうございます。
      またお会いできるよう、冬までにしっかり稼ぎます!

  2. なおちゃん より:

    稲本さん、コメントありがとうございます。
    勉強会の後、心がアツアツのうちに仕上げた投稿です。
    来年1月も、みなさんにお会いできるのを楽しみにしています。

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